傾国一歩手前の王配 |
あるところに王様と王配がいました。 王様は王配を愛してやまず、お願いされるとなんでも言うことを聞いてしまいます。 遠くでうまいお酒があると聞けばお取り寄せ。 遠くで世にもまれな花があると聞けばお取り寄せ。 ドレスは日に何度も着替えるほど作ります。 王配の散財し放題にとうとう王様は限界を感じました。 まともな王様だったので国を王配が食いつぶすまでの無茶はさせませんでした。 王様はもう贅沢はほどほどにしてほしいと言いました。 王配はわがままを言っても仕方がないと悟り、大人しくなりました。 あるとき久しぶりに王配が王様にお願いをしました。 中庭の一角に兎鹿小屋を建てたいというのです。 広い敷地ですし、兎鹿小屋を建てるのにたいして懐は痛みません。 喜んで突貫工事で建ててあげました。 兎鹿小屋には兎鹿が二十匹入りました。 それからというもの王配はずっと兎鹿小屋で一日を過ごします。 それでもご飯のたび、寝るたびに戻ってくるので王様は何もいいませんでした。 お城の使用人たちは、ときどき兎鹿小屋から聞えてくる奇妙な物音と鳴き声に首をかしげます。 それから一年経ちました。 兎鹿小屋から出てきた兎鹿たちはどれも、誰も見たことがないほど立派な兎鹿でした。 商人や物珍しいものが大好きな貴族たちがこぞって欲しがりました。 王配はその兎鹿を売ってまた愉快に暮らしました。 おしまい |
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